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→Huluドラマ『時計館の殺人』(2026)第2話完全ネタバレ考察レビュー
――俺は一人でいるその方が安全なんだ……部屋に一人でいる!絶対誰も来んな……来たらどうなっても知らないぞ!いいか……いいか?いいか!?
by 内海篤志(演:今野浩喜)
作品データ
原題:Huluオリジナル 時計館の殺人:第03話
監督:内片輝
脚本:戸田山雅司
早野円
藤井香織
内片輝
原作:綾辻行人『時計館の殺人』
音楽:富貴晴美
主題歌:ずっと真夜中でいいのに。
「よもすがら」
製作:日本テレビ
配信:Hulu
出演者:
江南孝明:奥智哉
島田潔(鹿谷門実):青木崇高
福西涼太:鈴木福
瓜生民佐男:岡部ひろき
樫早紀子:吉田伶香
河原崎潤一:渡辺優哉
新見こずえ:阿部凜
渡辺涼介:藤本洸大
小早川茂郎:山中崇
内海篤志:今野浩喜
光明寺美琴:向里祐香
古峨倫典:伊武雅刀
古峨永遠:真木ことか
古峨由季弥:志水透哉
伊波紗代子:神野三鈴
田所嘉明:矢島健一
野之宮泰斉:六平直政
島田修:池田鉄洋
中村青司:仲村トオル
※本レビューは第03話の完全ネタバレレビューとなります。
筆者は原作既読済み、配信全6話視聴済みですが、出来る限り03話時点のネタバレで語ります。
Huluドラマ『十角館の殺人』(2024),
および原作小説、コミカライズ等についても言及有。
総文字数:4006文字
読み終わるまでの時間:約10分
原作上巻最終章まで:解決編後観返したい重要回
映像化箇所:原作【第7章後半〜第9章】
第3話では新館側/旧館側共に時計館に纏わる過去が少しずつ語られ、事件の概要が明らかになっていく。
同時に、犯人の動機に繋がる話題や伏線も多く、解決編を観た後観返すのに一番面白い回と言えるかも知れない。この話まででも、充分に推理は可能だ。原作ではここまでが上巻、ドラマ第一部も折り返しである。
以下、感想を述べていく。
内片輝監督による言葉で説明しない映像演出の数々
前作、『十角館の殺人』の際にも思ったことだが、内片監督の演出は映像表現や俳優への信頼が前提にある。Huluオリジナルは地上波放送でないために、ある程度自由が効くということもあるのかも知れないが、近年批判されがちな“説明台詞”というものがほとんどない。
それは例えば、原作小説と比べてすら少なくなっているのだ。小説:文字媒体では《地の文》(=台詞以外の文章)で様々な感情や仕草の意味について説明が出来るため、時に映像化する際にはそうした記述の一部を“台詞に落とし込んで”説明しがちだ。(例えばわざわざ登場人物に「眩しいなぁ」と言わせる、など、感覚値を言語化することが多々ある)これは別段悪いことばかりではなく、物語を観ている側にきちんと理解させるためには仕方がない部分もある。
しかし、前作でも今作でも、内片監督はそうした地の文……更には原作内ですら説明台詞的になってしまっているような箇所を、役者の演技によって観せようとすることが多い。
今回、新見が遺体を発見し、パニックになりかけた後だと言うのに、しばらくすると机に突っ伏して眠そうにしているシーンがある。
原作では同じ場面で「眠くてたまんないの。身体も、何だかだるい」と台詞としてそれを言わせている。
映像媒体で、言葉でなく“画で魅せる”というのは、本来なら当たり前のことではあるのだが、最近ではなかなかこうした落とし込みは少なくなっている。
渡辺の遺体に毛布をかける瓜生の手の震えや、「こんな酷いことを……」の台詞で河原崎の声が震えていたりと、目の前で長い付き合いの友人を殺された大学生2人の動揺や、謎解きで仮面の話をしてやや興奮気味の江南に苛立って語気が荒くなる新見の「よくわかりませんけど」など、細かな人物描写も実にこだわられている。これは演者の演技力だけでなく、間違いなく現場でのディレクションの賜物であり、そうしたところが、観ている側としても内片監督の画への信頼に繋がる。
その分、原作既読の身からすると犯人に対して「バレるぞお前!」となるような仕草もしっかりカメラに拾われていたりするのだが(笑)。
今回に関しては、ある場面での犯人の目線は完全に“答え合わせ”になっているが、知らないで観ているとそこまで気にはならないのだろうか。解決編を観た後で観返すとなかなかギリギリのところを攻めていると思う人も多いだろう。
前作の犯人も発言や表情は後から観るとかなりわかりやすかったので、きちんと感情線が伝わるように作られているのは正しいことだろう。ミステリーの犯人たちは“殺しのプロ”ではないのだから。
残酷な遺体演出と時計/地図などの視覚化
その他相変わらず細部の作り込みが素晴らしく、前回も語った遺体描写は今回更にキレ味を増している。毛布をかけられた渡辺の遺体は足がおかしな形に曲がったまま死後硬直が始まったのか、その後いつ出て来てもそのまま青黒く折れ曲がった足が画面の端に見え隠れしているし、その遺体を見て腰を抜かしたように同性である樫の部屋に駆け込む新見の姿もリアルだ。そこであんな風に顔を潰され助けを求めるように手を伸ばした遺体を見つけたら……ショック状態でパニックになるのも無理はない。
しかも犯人は彼女に発見させるためにわざわざ渡辺の遺体に導いている……やけに気取った動きをする犯人と、夢現で状況を理解できていない新見のギャップもまた映像で観せられるとグロテスクさが増す。原作で読んだ時は大して気にならなかったがこうして映像で観るとその残酷さは筆紙に尽くしがたいものだ。
犯人よ、新見が何したって言うんだ……←
新館時計塔のセットの作りも相変わらず素晴らしく、吹き抜けの高さを感じる塔を、上下アングルからその高さを感じさせるように撮っているところにも美術スタッフへの強い信頼と自信が感じられる。
鹿谷が手を叩いて音が反響する様子など、観ている側がやって欲しいことをきちんとやってくれるのは嬉しいものだ。
また、第1話から画面の端に常に表示されていた時計館の地図は、こうして事件が起こり始めると各人の居場所や犯人の移動距離がわかりやすくなり、広い舞台を伴った物語の理解に非常に助かる。新館、旧館ともにこれがあることで館のスケール感も伝わるので、非常に良い演出だったと思う。
同じようにさすがに時計館だけあって画面には度々館内の時計が写り、事件の時間経過がよくわかるようになっている。江南が第1話で眺めていた懐中時計を自分用に拝借してるのもポイントで、常に旧館では時間を意識して登場人物は行動している。新館でも度々時計は映っているので、新館側と旧館側の時間がどの程度離れているかも一目でわかるようになっている。
原作ファン待望!鹿谷の「今日の一本」
鹿谷については今回、前作ではなかったことにされていた「今日の一本」の設定が復活(?)していたが、これも前回の折り紙と同じく特に説明はないので原作読者への軽いサービスカットくらいに思って良いだろう。
(原作鹿谷は以前肺を悪くした関係で煙草を一日一本しか吸わない……これは第1作『十角館の殺人』からの設定だが実はむしろ原作ではこの『時計館の殺人』終盤でその誓いを破ってもいる)
今作では前作ほど喫煙シーンが多くなく、原作よりよっぽど皆本数が減っている。配信限定とは言え前作は吸いすぎていたのか……そういう意味でも、鹿谷のこの設定の存在は役に立っている。
相変わらず福西は今ひとつ鹿谷の推理にノってこないが、今回は旧館側で江南の心の声「どうしたら良いんでしょ……鹿谷さぁん」が聞ける。全江南×鹿谷ファンは大歓喜である。これ自体は原作にもある台詞だが、その時に何故か時計館旧館の見取り図の横に描かれた鹿谷のイラストを眺めながら何とも情けない声でそれを言うので、この江南は原作よりずっと可愛く映るし、そんなイラストを描いちゃう江南の鹿谷愛が眩しい。
早く会わせてやってくれ、江南くんを一人にしてはいけないゾ島田。
人間ドラマの表現はますます厚く……犠牲者もう出るなと願ってしまう(フラグ)
その他にも細かい人物描写がとにかく物語に厚みをつける。
渡辺と樫の遺体を見つけ震える新見を突然「こずえ」と名前呼びし始める河原崎は1話の感想でも書いた通りやっぱり何かあったのだろうし、それでもその後新見が駆け込む場所は瓜生の部屋だったり、横にいた河原崎の袖を振り払ったりと信頼されてはいない感じもリアルだ。
……何をした河原崎、お父さん怒らないから聞かせてごらんなさい?←
一方で瓜生への河原崎の信頼も揺るぎなく、《振り子の部屋》に行く際のやり取りはさすがに今館内にいる唯一の10年来の友への信頼が感じられる。
また、一番年長で場をまとめて欲しい、しかも自分の上司である小早川が呆けて役に立たないことで自分が奮起して扉を破ろうとする江南や、やはり小早川と光明寺の関係が暴露された際の圧倒的な新見の引きっぷりなど、物語の本軸には絡まない部分での人間描写の演出が細かい。
特に今作は動機も非常に人間的な、人間ドラマとしての感情も強く描かれる原作だ。そこに書割的でない、生きたキャラクターの人間らしさを積み重ねていくため、ほんの6話、6時間程度の付き合いの人物たちへの共感が増し、犠牲になったときの衝撃も増す。
それは新館側でも同様で、亡くなった夫や娘について語る際の伊波の目には涙が浮かんでおり、基本的に冷静に語る印象が強い彼女の、喪った家族に対する想いが滲んでいて胸が痛むのだ。
どう考えても死亡フラグにしか見えない言葉を残す内海や、光明寺の愛人バレで江南にまで失望され珈琲を持ったまま立ちすくんでいる小早川など、緊迫した状況の中にもくすりと笑えるシーンが挿入されているのも良い。
ただ、原作と違い小早川が既婚者であるという明確な発言はなく、第1話でも左手薬指に指輪があるかわかるシーンはほぼないので純愛の可能性は捨て切れない。……江南のこの反応を見るに多分それはないのだろうが(笑)
原作既読者勢による次回へのヒントと期待
今回は最初に書いた通り、原作を知った上で観るとかなりヒントの多い回である。
また、いくつかの謎に答えも出ている。
解明した謎1:光明寺の交霊会について
→A:小早川と光明寺による狂言。暗闇でトランス状態になった際に腕を隣の人間の手と入れ替え、自由な手でラップ音を鳴らした。
解明した謎2:何故光明寺は自身のアクセサリー(霊的不純物)を持ち込んでいたのか?
→A:交霊会は小早川と光明寺の狂言、自作自演。不純物を持ち込ませない理由がないことを知っていたので自分だけは持ち込んでいた。
第1話をよく観ると、光明寺のトランス状態以後は手元が映らず、首から上だけのアングルになっている。内片監督お得意の自然な映像マジックである。
今回はヒントが多く、またあまり言い過ぎると答えそのものになってしまうのだが、今回重要なのは
【2人の登場人物の仕草】
である。
1人は、今回より前の話と今回で同じ仕草が繰り返され、もう1人は今回の中で二度それをしている。一度目はギリギリ理由がつけられるが、二度目は“明らかに不自然なタイミング”でそれをしているので注意して観て欲しい。
これは第1話レビューでの【音とヴィジュアル】のヴィジュアルにも関連し、かつ今後の話でそこに繋がるヒントが出る。
よく覚えておいて欲しい。
あとは特定の人物に対する目線や対応に明らかにおかしい点がある人物もいるので、これもよく観ておいて欲しいところだ。
死亡フラグを立てた内海には予想通り犯人の魔の手が迫る……では、何故内海は狙われねばならなかったのか?
次回へ続く。
→Huluドラマ『時計館の殺人』(2026)第4話完全ネタバレ考察レビュー
容疑者リスト
江南孝明:奥智哉
瓜生民佐男:岡部ひろき
樫早紀子:吉田伶香
河原崎潤一:渡辺優哉
新見こずえ:阿部凜
渡辺涼介:藤本洸大
小早川茂郎:山中崇
内海篤志:今野浩喜
光明寺美琴(=寺井光江):向里祐香
古峨由季弥:志水透哉
伊波紗代子:神野三鈴
田所嘉明:矢島健一
野之宮泰斉:六平直政
島田潔(鹿谷門実):青木崇高
福西涼太:鈴木福
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