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→Huluドラマ『時計館の殺人』(2026)第4話完全ネタバレ考察レビュー
――この事件に向き合って、何がどのようにして起こったのか見極めないと。それが、死んだ仲間へのせめてもの……償いなんです。
by 瓜生民佐男(演:岡部ひろき)
作品データ
原題:Huluオリジナル 時計館の殺人:第05話
監督:山本大輔
脚本:戸田山雅司
早野円
藤井香織
内片輝
原作:綾辻行人『時計館の殺人』
音楽:富貴晴美
主題歌:ずっと真夜中でいいのに。
「よもすがら」
製作:日本テレビ
配信:Hulu
出演者:
江南孝明:奥智哉
島田潔(鹿谷門実):青木崇高
福西涼太:鈴木福
瓜生民佐男:岡部ひろき
樫早紀子:吉田伶香
河原崎潤一:渡辺優哉
新見こずえ:阿部凜
渡辺涼介:藤本洸大
小早川茂郎:山中崇
内海篤志:今野浩喜
光明寺美琴:向里祐香
古峨倫典:伊武雅刀
古峨永遠:真木ことか
古峨由季弥:志水透哉
伊波紗代子:神野三鈴
田所嘉明:矢島健一
野之宮泰斉:六平直政
島田修:池田鉄洋
中村青司:仲村トオル
※本レビューは第05話の完全ネタバレレビューとなります。
筆者は原作既読済み、配信全6話視聴済みですが、出来る限り05話時点のネタバレで語ります。
Huluドラマ『十角館の殺人』(2024),
および原作小説、コミカライズ等についても言及有。
総文字数:4069文字
読み終わるまでの時間:約10分
事件は佳境:旧館は生存者もほぼいない
映像化箇所:原作【第11章後半〜第13章前半】
いよいよ第一部も佳境に入り、事件も後半戦。旧館の生存者はほぼいなくなり、瓜生の口からはこの事件の動機となった可能性がある過去についても語られる。
新館側でも鹿谷・福西と由季弥が出会い、容疑者も絞られてきた。
以下、感想を述べていく。
複数監督による弊害?演出の違いと設定の取り扱いミス
鹿谷の「今日の一本」設定は必要だったかのか
第5話も引き続き山本監督の演出になるが、今回は内片監督との違いがやや悪い意味で出てしまった回となる。相変わらずこのドラマ化は人間描写にも厚みをつけ丁寧に作られているのだが、その折角の描写に演出的な詰めの甘さが見え隠れしてしまった。
例えば、鹿谷の「今日の一本」設定については第3話で出てきた際に“原作読者へのサービスカット”とは書いたものの、それならそれで今作中では貫いて欲しかったものだが……この第5話の中、鹿谷は短いタイミングで特に説明もなく2本目の煙草に火をつけている。
元々前作ではオミットされていた設定でもあるし、原作本においてもこの事件の解決編でその禁は解いているのだが、それなら変に匂わせることはせずに第3話での一言もバッサリカットした方が良かっただろう。ここは、監督が分業になった弊害が大きく出ていて、設定に関するコンセンサスが取れていなかったのか、はたまた第3話での台詞は演じた青木のアドリブで、内片監督がそれを残してしまったのか……など色々考えられはするが、とにかく不自然な描写になってしまったのは間違いない。
今回はついに奥智哉演じる江南も喫煙デビューを果たし、前作ほど全体に喫煙シーンの少ないドラマの中で山本演出の第一部後半3話では江南や、次話では福西にも喫煙シーンがある。
この二人はどちらも原作では事あるごとに煙草を吸っているので違和感はないのだが、“喫煙シーンの多さ”自体が前作でもSNSを中心に話題になった演出の一つであるので……前作不参加である山本監督はもしかしたらなるべく前作にトーンを合わせようとしたのかも?と考えるのは邪推のしすぎだろうか。
台詞の違和感と二人の監督の演出法について
瓜生が河原崎の過去について語る際の「俺様な奴」という表現も、劇中舞台である1980年代を考えるとやや違和感がある。こうした言葉が一般層に浸透するようになったのはおそらく1990年代中盤〜2000年代あたりからだと思うので、もちろん2026年現代に観るドラマとしてはわかりやすくはあるのだが、瓜生の口から語られる言葉としては引っ掛かりを感じてしまう。
更に細かいところだと、伊波から田所の呼び方が「田所さん」になっている箇所があり(基本的にこの場面以外は呼び捨て)、これをNGにしたりカットしなかったのも単純に詰めが甘く感じてしまうところだ。
また、終盤の新見が抜け道を見つけ、その抜け道を経て旧館から脱出するシークエンス。
ここでの新見が犯人(と思わしき人物)から逃げる際の「私を殺しにきたんだ……」は内片監督なら台詞として言わせなかったのではないかと思う。勿論脚本には書いてあるのだろうしハッキリとは言えないのだが、これはやや内片演出では感じなかった“説明台詞”に聞こえてしまうところだ。
このシーンを踏まえると、前話で河原崎が殺害されるシークエンスでの原作のモノローグをそのまま台詞として言っているカットも、内片監督とは微妙に演出法が違って感じる。
ただ、勿論これらの不満点はドラマ全体の完成度が高いからこそ言えることで、単純に観ている分にはそこまで気になることではない。ドラマとしての完成度が高い故、細かい粗に目がいくタイミングもあるというだけのことである。
殺される理由がなかった被害者たちと旧館探偵コンビの絆
第5話は瓜生の口から今回の事件の動機に繋がるであろう、瓜生と福西が過去に犯した間違いについて語られるわけだが、彼の言が正しいとするなら、現在のところの被害者は全員揃って“殺される理由がなかった”という話になる。
……どころか、渡辺に関しては福西の親の離婚前の名前と“名字が同じで名前も似ていただけ”、ということが瓜生の口から語られるのだが……
本当に犯人よ、渡辺が何したって言うんだ。
今も画面の端の方で毛布かけられて足がはみ出ているんだがどうなってるんだ犯人←
「彼はきっと、間違われて殺されたんです」
瓜生よ、自信持った顔で語らないでくれ……。
冗談はさておき、この推理の場面では、旧館における瓜生と江南の探偵コンビが、原作より遥かに心が通じ合ってる場面が演出され、新館側の鹿谷-福西のコンビがイマイチ噛み合っていないのとは逆に、二人の間に同じ傷が共有されている描写は物語に深みを与えている。
瓜生の「償い」という言葉は切迫感を伴い、冒頭、河原崎が死んだ後の悲痛な慟哭と合わせ、この事件を解決しなければならないという使命感すら滲む。
そこに江南も前作十角館の記憶を重ね、二人が本当の意味での協力関係を結ぶようになる関係性の変化が、この第5話までの間で丁寧に積み上げられている。
原作では同じように十角館の記憶を反芻しながらも、江南は瓜生への疑いを捨てきれずにそれを口には出すことがない。
わざわざ口に出す/出さないの違いではあるが、この奥智哉演じるドラマ版江南の真っ直ぐさや、前作での犯人との関係性を見てきたからこそ、江南が瓜生に投げ掛ける言葉は観ている側に真っ直ぐに響いてくる。
前話感想ではドラマ版の鹿谷のキャラクターが原作から一歩進んだ新たな鹿谷像として固まりつつあると書いた。同じように今回で原作より叙情的に、人間味を加えて演じられた江南は、しっかりとシリーズ主人公の一人としてこのドラマ化に新たな意味を吹き込んでいる。
緊迫した環境で余裕がなくなっていく人間描写は見事
旧館の生存者が減っていく中で余裕のなくなっていく登場人物たちの変化も丁寧に描かれ、小早川はもはやその焦りを隠すことができなくなり、他人のため息にすら苛々してしまう。第3話あたりまではまだ余裕があったために自分以外が入れた珈琲も受け取っていたが、今回はもうそんなものには見向きもせず、内海の残した酒を飲んで現実逃避的なムードに浸っている。
ただ、それでも光明寺犯人説には常に意義を唱え、そこにはきちんと光明寺への愛情が垣間見えるなど、やはり原作の設定を上手に人間ドラマに変換している。
冷静になるタイミングがあったり、突然怒りを露わにしたりと、とんでもない環境で酒を飲んだことで、沸点がおかしくなっている小早川と、そんな中で唯一の大人としてなんとか冷静なままでいようとする江南の対比にも原作以上に人間らしい感情の揺れ動きが見て取れ、極限状態に置かれた登場人物たちのギリギリ感が伝わってくる。
ここでの小早川から瓜生に「くん」がついたり外れたりするのは、前述の伊波→田所と違い充分に納得できる。
鹿谷の折り紙設定の扱い方について
新館側では鹿谷の折り紙によって由季弥の逆鱗に触れるシークエンスがあり、鹿谷の折り紙趣味が物語の中で活かされる。『迷路館の殺人』を映像化していないのでこの急な折り紙趣味についてはやはり物語の中で唐突感を感じてしまうので、これは第1話にでも何かしら台詞として入れておいても良かったように思う。
ドラマとしては第1話の鹿谷の部屋から折り紙は度々映像の中にも映るし鹿谷が折るシーンもあるのだけど、キャラクターと設定が繋がり難いのはシリーズの間を抜いてしまった弊害である。
原作ファンからするとお馴染みではあるが、これだけ丁寧に作られたドラマ版だからこそ、細部の説明不足はややマイナスに映る。
更に次の被害者が……痛々しい殺害シーン
今回は被害者が出ず、最後に新見が襲われる場面で次回への引きになるが、ここも実に痛々しいシークエンスだ。
犯人の影に怯え、廊下で転んで片足が裸足になりながら、やっと見つけた助かる可能性である抜け道を、一人ぶつぶつと呟きながら歩いて行く。石や土の転がる足場の悪い抜け道を、ふらふらふらふらと、やっとの思いで出口へ向かっていく。「絶対助かる、絶対助かる」という祈りのような言葉と目の下にクマはあまりにも悲痛で、なんとか助けてやりたいと誰もが思うはずだが、こんなふうに1人抜け道を見つけた者が助かるはずもなく……。
しかも、彼女は最後に“何か”を見つけてしまうわけで、もうミステリーの定石として助かるはずがないのだ。彼女がそれを見つける前、出口を探し当てた際に一瞬見せる壊れた笑顔は哀れでならない……。
ちなみに、彼女もまた瓜生の言が正しければ殺される理由はまったくない。この日、ここに福西の代わりに来ることがなければ、友達の死体を見せつけられ、先輩の遺体に助けを乞い、殺人鬼のうろつく不気味な館で夜を明かすこともなかったのだ。
……新見よ、お前本当に何かしたっけ……?
第1話であんなに天真爛漫に笑っていた新見を返してくれ犯人よ……。
原作既読者勢による次回へのヒントと期待
物語も佳境に入り、徐々に事件のヒントは出揃いつつある。
今回は今までの第4話までに感じていた違和感や謎について、それを補強するような描写が多々あるので見逃さないで欲しい。
【福西と瓜生が見た過去の葬式】
これは今回二度目の回想だが、実はこのシーン自体は出てこないはずの第1話と繋げて観ることで、重要なヒントが明らかにされる。
【江南の推理の穴】
江南はやはり第1話である重大な間違いを犯し、それは彼の旧館での探偵役としての致命的な欠陥となる。江南はワトソン、推理をする役でないというのは、やはり定型なのだと覚えておきたい。
江南の推理は、“前提から間違って”いる。
【野々宮の行方不明について】
野々宮はどのタイミングで、なぜいなくなったのか?野々宮が劇中に取った行動をもう一度洗い直してみて欲しい。
いよいよ事件は佳境であり、第1話から張られた伏線を、今一度整理してみるときが来た。
勘のいい人なら、もうほとんど答えには気づいている頃だろうし、後はその点を線にすることが出来るかどうかだ。
今回は他の回と比べてドラマの演出面でのマイナスを多く書いてしまったが、正直“重箱の隅をつついた”様なものだし、ドラマ自体の出来においてはほとんど減点にはならないということは注記しておきたい。
第一部事件編は次回でラスト。
あなたは犯人に辿り着けるか?そして、旧館は誰が生き残るのか……。
次回へ続く。
→Huluドラマ『時計館の殺人』(2026)第6話完全ネタバレ考察レビュー
容疑者リスト
江南孝明:奥智哉
瓜生民佐男:岡部ひろき
樫早紀子:吉田伶香
河原崎潤一:渡辺優哉
新見こずえ:阿部凜
渡辺涼介:藤本洸大
小早川茂郎:山中崇
内海篤志:今野浩喜
光明寺美琴(=寺井光江):向里祐香
古峨由季弥:志水透哉
伊波紗代子:神野三鈴
田所嘉明:矢島健一
野之宮泰斉:六平直政
島田潔(鹿谷門実):青木崇高
福西涼太:鈴木福
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