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連続ドラマレビュー
前話レビューはコチラ

――パンケーキの粉によ、ココナッツ混ぜちゃうんだよ。そしたらハワイアンパンケーキになっちゃうから。
by 大友三郎(演:中野英雄)
作品データ
原題:ガス人間
監督: 片山慎三
脚本:ヨン・サンホ
リュ・ヨンジェ
原作:『ガス人間第一号』
(監督:本多猪四郎 / 脚本:木村武)
音楽:大間々昂
主題歌:サザンオールスターズ
「いとしのエリー」
製作:東宝
配信:Netflix
出演者:
ガス人間:UTA
岡本賢治:小栗旬
甲野京子:蒼井優
藤川華歩:広瀬すず
藤川富士太:林遣都
阿部美智子:芋生悠
吉田則夫:こばやし元樹
西山達也(テレビ局JNT 報道記者):伊島空
大友三郎(指定暴力団「藤代会」組長):中野英雄
大友リキ(指定暴力団「藤代会」若頭):松浦祐也
山崎慎三(指定暴力団「藤代会」組員):三河悠冴
桐島かずみ(三浦都知事のライバル候補):夏川結衣
※本レビューは第03話の完全ネタバレレビューとなります。
筆者は配信全8話視聴済みですが、出来る限り03話時点のネタバレで語ります。
リメイク元映画『ガス人間㐧1号』についても言及有。
総文字数:5067文字
読み終わるまでの時間:約13分
第3話短評
第3話では再びガス人間の激しいアクションシーンが観られ、その地上波ドラマでは再現できない大規模なカーチェイスシークエンスには、Netflixオリジナルシリーズの強みと本気を見ているようで嬉しくなる。
予告されていた二人目の被害者がヤクザ組織の組長ということで、いよいよ今作においての“社会を牛耳る者”の存在が明らかになってきた感もあるが、この辺りをどう見るかがドラマに入り込めるかの鍵になるだろう。
個人的には今回・次回と合わせ、このドラマの楽しみ方を整えるチューニング回のように考えており、この辺りで合わなければ本格的にドラマ全体の評価が下がってくるのではないだろうか。
筆者としては……理解はするが納得は出来ない、という立ち位置でここから最終話までを観た、といったところだ。
“春日組直系藤代会”という名称に覚えた違和感と嫌悪感
今回はヤクザ組織:春日組直系藤代会の会長である大友三郎がガス人間のターゲットとなる。
前回レビューでは触れなかったが、この春日組と藤代会、という名称は明らかに原作映画『ガス人間㐧1号』の春日流家元藤千代の名から取られたものだと思われ、先に原作を観ていた方の中には、今作においてもこの組織に何か重要な意味合いがあるはずだと考えた人もいたのではないだろうか。
藤千代は原作ではガス人間の行動理念のすべて……ガス人間が犯罪を犯す理由そのものである。故・八千草薫が演じる、『ガス人間㐧1号』を象徴する登場人物と言って良い。
その名をオマージュする以上、それなりの意味が求められてしまうのはリメイク作品としては当然のことだと思うのだが……残念ながらその期待が満たされることはなく、藤代会はただのヤクザ組織で、ガス人間の復讐のターゲットという以上の意味は何もなかった。
これはまったくもって肩透かしな展開であり、正直なところ悪手すぎたのではないかと思う。
今作が原作とはまったく違う2020年代の『ガス人間』を作ろうとしていることは明らかであり、それは意識してここまでドラマは観てきたつもりだ。
まったく同じものが作れるはずはないし、そんな風に作る意味もない。原作を知らずに観て、もしかしたら原作は一生観ることがない人も……いやむしろそんな視聴者が大多数なのかも知れない。リメイク作品とはそれで良いと思うし、無理に比べるのも、それでどちらかの評価を落とすのも愚かな見方だろう。
しかし、その上で、である。
今作も製作に当然のように東宝が関わっている中で、その元専属女優でもあった八千草薫が演じたキャラクターの名前をこんな風に消費してしまうのは、あまりにも原作に対する敬意に欠けるのではないだろうか。
少なくとも、今作には原作の存在があり、クレジットにもそのタイトルは明記され、Netflixではドラマに合わせて原作映画の配信もしている。
そんな企画の中で、この名前の使い方に誰もSTOPを掛けなかったのだろうか。
まったく別のヤクザ組織の名などいくらでも思いつく中で、わざわざこの名を冠したのには疑問が残るし、藤千代に対応する名としては既に「藤」川富士太・華歩の配信者兄妹がいるのである。
これは第4話のレビューで述べることになるが、この二人がいながら大友の組織の名前に藤千代を思わせる要素を入れたのは、甚だ疑問だ。

片山慎三演出と脚本が噛み合っていない可能性
また、今回の物語の主軸はこの大友親子率いる藤代会とガス人間の攻防になるわけだが……どうにもヤクザ組織の演出が過剰に過ぎる。いくらなんでもリアリティがなさすぎる上に、このあたりでは台詞にもブラックコメディ的な笑いの要素を入れてくるので、どうしても観ていて戸惑ってしまう。
第1話の新・文庫ラーメンの店主の台詞はあくまで本筋とは無関係なところに挟まれていたので、そこはある程度ふざけていても許容できた。しかし、今回はそれが完全に主軸になってしまい、急にドラマの作りが変わったかのように感じてしまうのだ。
今作は全話で片山慎三監督が演出を取っているはずだが、通しで観てもこの第3、4話は他とやや空気感が違う。地上波連続ドラマは演出家が複数体制の作品が多く、中盤でこうした空気感を変えるエピソードが挟まることはよくあることで、そこにはドラマ全体を飽きさせない効果もある。
しかし今作は全話一挙配信で話数も8話と決して長くはないので、むしろ違和感だけが膨らむ結果になっているのではないか。
ただ、これは第4話でも述べるが、片山監督は、本来もしかしたらこうしたコミカルさとスピード感のある演出の方を得意としているのかも知れない。
今回にしても、この全体に重苦しいドラマの中だから違和感が生じているだけで、どこかB級アジア映画のような雰囲気は、狙ってやっているとしたら非常に面白いものだ。
身も蓋もない話だが、この第3話までを観ると、そもそも片山監督の演出と今作の脚本が噛み合ってない可能性さえ見えてくる。
大友の息子であるリキが唐突に言う「パーフィニーして良いかなぁ?」という、公開直後からSNS上でも話題になっていた謎の台詞があるが、これも演じた松浦祐也のブログによると、片山監督から要望のあったアドリブ台詞だそうだ。
その言葉の意味するものは最終話で明らかになるのだが、片山監督が得意とするのは、こうした自由度の高い演出と狙ったチープ感なのではないだろうか。
現状あまりノリ切れていないと筆者は書いてきたが、実はこれだけ不満を述べながら、こうした演出が増え始める今回、次回くらいからドラマとしては俄然面白くなるのである。
B級アクション映画風のコミカル演出として観ると楽しくなってくる
なんでもアリの無法状態のヤクザ組織:藤代会
今回の演出は全体として非常に雑で、リアリティラインが大幅に下がっている。
特に、藤代会の描写に関してはいくらなんでも笑ってしまうレベルで、このヤクザ組織が見過ごされ、「どんどん勢力を伸ばしてるらしいです」程度の言われ方で済むのなら、もはや劇中日本は法治国家ではない。
地下の違法賭博に関しては物語的な大袈裟な演出として目を瞑ることは出来る。
とんでもない厚さの札束が舞っていたり、中国雑技団の如く天井から水を撒く女性がいたり、謎の串物屋台が出ていたり……そもそも行われてる“スッポン・ルーレット”がまったく意味不明だったり、明らかに中にいる客が堅気の人間ではないのも、まぁそういうこともあるだろうと一旦納得はしよう。
しかし、終盤でガス人間が潜入した際に行われている人身売買、臓器密売の描写はいくらなんでもやり過ぎだ。
あそこまでやってしまうと、もはやリアリティライン云々の話を超えてきてしまうし、それを恐らく東京都内のど真ん中でやっているのもおかしい。
賭博にしろ人身売買にしろ藤代会事務所の地下で行われていることが描写されており、この事務所には第2話で登場した出前の人間や、そもそも賭博場の会員も出入りしているのである。
京子の務めるTV局JNT内で「会員になるのは時間が掛かる」と言っている以上、“一般人完全禁制”でもないのだろうし、すぐ目の前にはJNTの所有する映像撮影用の貸し倉庫まであるのだ。
これでその犯罪が明るみに出ないとしたら完全に癒着である。どうやらこのドラマの社会を牛耳る組織はかなり大きく根を張っている。……本当にそんな展開になる可能性もまだこの時点では残されてはいるが。
倫理観ゼロのマスゴミ:JNTと超性能指向性マイク
京子たちJNTの取材もかなりデタラメで、いくら指向性マイクが優秀だからと言って、向かい側の建物、しかもガス人間の襲撃に備えガムテープで窓の隙間を埋めているような建物の中の、携帯電話で話す音声をあんなにハッキリ聴き取れるものだろうか?そんなものがあるとしたら、この世の中は盗聴天下である。
しかも終盤にはガス人間の襲撃で構成員達が次々襲われていく中、カメラを向け続けているわけで……その倫理観の欠如も気になる。
“マスメディアの暴走”という役割を京子だけが担っているのならまだわかるのだが、ここまでくるとJNTという会社組織そのものに問題があるような気もしてくる。
第1話の佐野教授の人体破壊もカメラを止めずにそのままお茶の間に(しかもあの場面の屋外は明るいので少なくとも朝〜昼間で、老若男女TVに向かっている時間だ)流してもいたので、初めから倫理観などない会社なのかも知れないが、現実世界であんな番組を放映したらスポンサー企業の多くは手を引くだろうしSNSは大騒ぎだろう。
片山監督の作家性はどこまで許容できるか
今作への向き合い方を考える試金石としての第3話
こうした点を一つ一つ突いていくのは物語の楽しみ方として性格が悪いとは思うのだが、この第3話まで来ると、そもそも今作はもう少しB級寄りの楽しみ方をすべきなのかも知れない、と頭が切り替わってくる。
と、言うより……全体的な設定や演出が荒唐無稽に過ぎ、そう楽しまないと作品を正しく評価するのが難しくなる。
そう考えると、この第3話は本当にドラマの転換点であり、ここからはまるで開き直ったかのような展開が続いていくのだ。
京子の後輩の西山が学生時代にハッキングコンテストの常連だったということも、2000年代以降の“ハッカー万能者”描写と考えると微笑ましいし、その西山によって警察内部の内通者であることが明かされた吉田警部はここから先はあからさまに怪しい仕草が増えていく。
そもそも藤代会のヒットマンを始末する際も吉田は撃ち過ぎである。日本警察は銃を一発撃つごとに始末書を書かされるなんて話もあるほどで、挙句今回は人も死んでいるのでこんな事をしてしまったら、本来岡本より長い謹慎処分が必要なはずだ。
相変わらずの説明台詞問題も健在で、岡本に取り調べを受けている藤代会が雇ったチンピラの、「俺はあいつらの手足として金で雇われただけなんだって」はもう作文のレベルで、少なくとも取り調べを受けるチンピラの口から放たれる言葉ではない。
東宝特撮リメイクとしてのこだわり抜かれたカーアクション
ラストシーンのカーチェイスは流石にNetflixらしい大迫力で、これは北九州若戸大橋から黒崎アンダーパス・小倉へと至る長い道路で撮影していると言い、ロケ撮影でしか味わえない大規模な画の強さは、邦画大作……ハリウッドでもなかなか観られないものだ。
藤代会に入り込んだガス人間による、ガス化した目だけでターゲットを探す姿なども、グロテスクさにプラスしてまだガス人間にはこんな使い方もあったのか!と映像技術の発展に膝を打ってしまう。
……しかし、やはり追われる側の車内の大友と部下の会話にはなんの緊張感もなく、お笑いの要素が強くなってしまっているのは、ここまで来るとむしろ楽しい。
「防弾だよなぁ!」
「(タブレットで調べながら)ぼ、防弾です」
……タブレットで調べられるものなのか?車の商品ページでも見ているのか?
最後はマンホールの中を通ってきたガス人間に下から突き上げられてしまうわけだが、その直前の会話も酷い。
「俺は引退して、粉モンやるんだよ」
「ハワイアンパンケーキだよ」
「シャブ入れちゃうかぁ!?」
「辞める気ないじゃないッスかぁー!」
HAHAHA……
BANG!!
この辺りは意図的にギャグ展開にしているのだろうし、緩和からの緊張、唐突に訪れる死、というのも理解できる。
実際、観ていて面白くはあるし、背後に飛び上がる車がある中、フラッシュモブと結婚式を行う若者が対比的に映る画は美しくさえある。
この撮影も、東京駅前を全面封鎖し、実際に車を後方宙返りさせて撮られているらしく、そこには東宝特撮を現代に蘇らせるにあたり、実物の映像の迫力にこだわった片山監督のプライドも感じられる。
……とは言え、やはり考えれば考えるほど、この場面でのコミカル演出には首を傾げてしまうのだ。
善悪の基準は人それぞれではあるが、今回犠牲者となった大友は藤代会のやっていることの断片を見る限りでも、悪辣非道な犯罪集団のボスである。その中心的人物を、この様な表現で処理してしまうことが、本当にこのドラマの目指すところだったのだろうか。
次回へ向けて……
やはり今回はどうにも、藤代会の名称の由来からしてなかなか受け入れ難い回であった。ラストには死んだ大友の携帯のロックを京子が解除し、小畑が遺した日誌のデータを盗み出すところが描写されている。
ここまで来ると京子も単なる記者としては逸脱しすぎている気もするが、そもそも前述の通り彼女の務める会社自体が相当に常識外れな描写になっているので、この行動にもそこまで特異性を感じないのは物語の方向性として正しいのだろうか。
ドラマは見方さえ切り替えれば面白さを感じる部分も出てきている。
そして、次回はいよいよ林遣都・広瀬すず演じる配信者兄妹の登場である。
……先に言っておきたい。今作、主役はこの二人である(筆者の中で)。ここからが本番……かも知れない。
第4話へ続く

💨 ガス人間考察レビュー

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